都 道府県 魅力度ランキング最下位という不名誉な称号が下された瞬間、役所の執務室には重苦しい沈黙が流れ、ネット上には残酷なまでの揶揄と、それに負けない奇妙な連帯感が渦巻く。秋風が吹き抜ける季節の風物詩ともいえるこの発表だが、当事者である自治体にとっては決して単なる余興では済まされない。知名度不足なのか、あるいは観光資源の打ち出し方を誤ったのか。メディアが一斉にセンセーショナルな見出しを躍らせる裏で、地域のプライドをかけた静かな闘志が燃え上がっている。
毎年秋になると列島を騒がせるこの調査において、かつて定位置と揶揄された北関東勢や九州の雄が激しい順位争いを繰り広げてきた。しかし、都 道府県 魅力度ランキング最下位という過酷な烙印を押された地域ほど、全国区では知られていない驚異的なポテンシャルや、独自のカルチャーを濃密に秘めているケースが少なくない。ただ嘆くのではなく、絶体絶命のポジションを逆手に取った自治体たちの反撃が、今まさに始まっている。
最新ランキングで最下位となった自治体はどこか?知られざる観光資源と逆転の秘策
最新の順位表に視線を走らせた関係者が息をのんだ。今年、痛恨の最下位に沈んだのはどこなのか。全国的な報道でやり玉に挙げられたのは、首都圏からのアクセスも悪くないはずの地方都市だった。調査の数値を細かく紐解いていくと、浮き彫りになるのは「観光意欲度の極端な低さ」と「想起されるイメージの希薄さ」だ。名所がないわけではない。ただ、訪問先としての候補リストにすら上がらない「認知の壁」が立ちはだかっていた。
だが、その現場に足を運べば光景は一変する。地元住民にとっては日常すぎて気付かれてこなかった手付かずの原生林、予約困難な名店を支える朝採れの伝統野菜、あるいは江戸期から続く酒蔵群など、息をのむような観光資源が眠っている。低迷を打破すべく、該当自治体が打ち出したのは「ありきたりな名所案内」を完全に切り捨てる逆転の一手だ。万人受けを狙ったPR動画を破棄し、マニアックなサウナ愛好家やワーケーション滞在者に向けた「尖った体験型プログラム」への全振り戦略に舵を切った。弱みをさらけ出し、特定ターゲットを熱狂させる。この泥臭い戦術転換こそが、最下層からの脱出を誓う自治体の武器になりつつある。
株式会社ブランド総合研究所の「地域ブランド調査」と田中章雄社長の視点
この狂騒を生み出す震源地が、株式会社ブランド総合研究所だ。毎年実施される「地域ブランド調査」は、全国3万人以上の一般消費者を対象に、各地域の認知度や魅力度、居住意欲度など約100項目にわたる指標を緻密に数値化していく。その集計データは冷徹で、どれだけ行政が予算を投じようとも、生活者に響いていなければ容赦なく点数を削り落とす。
同社を率いる田中章雄社長は、メディアの取材に対して「魅力度とは、その土地の実力そのものではなく、あくまで消費者とのコミュニケーションの結果である」と一貫して説く。つまり、ランキングが底辺だからといって、その土地の文化や歴史が劣っているわけではない。消費者側がその魅力を「受け取っていない」という伝達不全の証明に過ぎないのだ。数字が示すシビアな現実は、行政に向けられた「見せ方を変えよ」という強烈な警告灯でもある。
茨城県庁の反乱――大井川和彦知事がランキングに突きつけた疑問符
この評価指標に対し、真っ向から異を唱えたトップランナーが茨城県庁だった。元IT企業重役という異色の経歴を持つ大井川和彦知事は、長年「最下位の常連」としてメディアに消費され続けてきた現状に業を煮やし、民間調査の妥当性を正面から追及した。「調査手法や設問設計が恣意的であり、県民の自尊心を不当に傷つけている」として、法的措置の検討すら示唆したその姿勢は、全国の首長たちの間にも大きな波紋を広げた。
大井川知事の行動は、単なるクレーマーの戯言では片付けられない。地域経済において、民間の単一ランキングによって付与された「不名誉なラベル」は、県産品のブランド力や企業誘致、さらには若年層の移住定着率に実害をもたらしかねないからだ。茨城県庁が示した強烈な反発は、全国の自治体が漫然と受け入れてきた「数字への盲信」にクサビを打ち、自らの指標で地域の価値を測定し直す契機となった。
『翔んで埼玉』に学ぶ自虐の魔力と「愛される最下位」の作り方
一方で、レッテルを軽やかに笑いへと昇華させた事例もある。映画『翔んで埼玉』が巻き起こした社会現象は、地域マーケティングの常識を鮮やかに塗り替えた。「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ」という過激なセリフに、地元は激怒するどころか全面的に乗っかり、コラボ商品やパロディ企画で莫大な経済効果を叩き出した。
何も持たないことを嘆くのではなく、持たないこと自体をコンテンツにする。この「愛される自虐」の力は凄まじい。美辞麗句を並べただけのパンフレットが誰の心にも届かない時代に、自らの泥臭さや中途半端さをユーモアで包み込んで発信する勇気。最下位争いを繰り広げる地域にとって、完璧を目指すのではなく「隙を見せる」ことこそが、現代の生活者と情緒的につながる最短距離なのかもしれない。
ABEMAやYouTubeの報道・ドキュメンタリーが暴く地方創生・観光マーケティング産業のリアル
地上波テレビがランキングの順位発表をバラエティ的に消費する裏で、ネット空間ではよりディープな言論が交わされている。ABEMAの報道番組では、ランキングに群がる自治体と、巨額のコンサルティング費用を吸い上げる「地方創生・観光マーケティング産業」の利権構造にメスを入れる徹底討論が頻繁に組まれるようになった。なぜ行政は、これほどまでに外部の評価に怯え、コンサルに頼らざるを得ないのか。
YouTubeに目を向ければ、既存の報道・ドキュメンタリーの手法を超えた、等身大の検証動画が数十万回再生を連発している。若手クリエイターたちが「最下位の街に行ってみたら凄すぎた」と銘打ち、行政が推す観光地を無視して、路地裏の居酒屋や名もなき海岸の美しさをリアルタイムに配信する。中央の広告代理店がパッケージ化した虚構のプロモーションは、クリエイターたちの剥き出しの生声によってやすやすと上書きされている。
脱・順位至上主義へ――地域独自の魅力を再定義するアクションプラン
誰かが1番になれば、誰かが最下位になる。そんな相対評価のチキンレースから抜け出す自治体が増えている。定住人口の激減に直面する日本において、全国民に向けた「なんとなく好感度が高い街」を目指す戦略はすでに破綻している。必要なのは、順位を上げることではなく、強烈なファンになってくれる「関係人口」をいかに囲い込むかだ。
ふるさと納税のリピーター施策を磨き込み、空き家バンクを活用して起業家を呼び込み、地元に根付いた文化を継承するスモールビジネスを支える。ランキングの1ランクに一喜一憂する予算があるなら、いま目の前にいる住民の幸福度と、地域に訪れる旅人の満足度に全精力を傾けるべきだ。数字の呪縛を解き放ち、自らの足元を凝視した自治体から順に、本当の意味での「唯一無二の魅力」を手に入れ始めている。 (出典: 都 道府県 魅力度ランキング最下位(Yahoo!ニュース))