栗原 類 現在の姿を目の当たりにして、かつてのお茶の間をざわつかせた「ネガティブすぎるイケメン」の残像をそのまま重ねられる人は、もうほとんどいないはずだ。漆黒のロングヘアを揺らし、視線を泳がせながらボソボソと自虐を呟いていた少年は、いつの間にか客席の空気を一瞬で支配する屈指の表現者へと脱皮を遂げた。かつて画面越しに見ていたあの独特な危うさは、いまや劇場で圧倒的な磁力を放つ狂気と品格へと昇華されている。
バラエティ番組で見せていた猫背でおどおどした佇まいは完全に過去のものとなり、表現者としての栗原 類 現在の地平は、はるかに骨太で強烈なリアリティを帯びている。所属事務所のエヴァーグリーン・エンタテイメントで確かな地歩を固め、気鋭の演出家たちがこぞって指名する演劇界のキーマンとなった彼の足跡を、多角的な視点から紐解いていこう。
「ネガティブモデル」の呪縛を解いた『アウト×デラックス』の衝撃から
時計の針を少し巻き戻してみる。栗原類という特異な才能が世間に見つかったきっかけは、間違いなくバラエティの文脈だった。中学時代からファッションモデルとしてキャリアをスタートさせ、端正な顔立ちと日本人離れしたプロポーションでモード界の注目を集めていた彼。しかし、フジテレビの深夜特番からレギュラー化した『アウト×デラックス』への出演が、彼のパブリックイメージを一変させた。
「自分なんてどうせ」「期待しないでください」。そんな言葉を吐き出す姿は、当時のテレビ界において異様であり、痛快でもあった。消費され尽くす一発屋で終わる危険性も孕んでいたはずだ。だが、彼は安易なタレント化の波に呑まれなかった。カメラの前でピエロを演じ続けることを選ばず、自身の根底にあった演じることへの情熱に静かに火を灯していったのだ。
栗原類の現在とは?驚きの転身と最新の舞台・ドラマ出演情報を独占追跡
「あの人は今、何をしているのか?」——そんな素朴な疑問を抱くライト層に向けて断言しよう。栗原類は消えたのではなく、一段高いステージへと潜行していただけだ。現在の彼の主戦場は、ごまかしの利かない舞台演劇の現場である。ストレートプレイから翻訳劇、さらにはアングラ色の強い実験的演劇まで、板の上に立つ彼のスケジュールは先の先まで埋まり続けている。
稽古場での彼のストイックさは業界内でも有名だ。台本を完全に身体へ叩き込み、演出家の抽象的なオーダーにも瞬時に肉体で応じる。最新の出演舞台でも、長身躯を折り畳むような奇妙な身体表現と、シェイクスピア劇にも通じる明瞭な発声で観客を圧倒した。テレビのバラエティで見せていた頼りなさはどこへやら、いまや作品全体のトーンを引き締める重鎮のような凄みを漂わせている。
『ルパンの娘』で開眼したコメディの才能と怪優への道
役者・栗原類の決定打となった作品を挙げるなら、フジテレビ系ドラマ『ルパンの娘』シリーズを外すわけにはいかない。泥棒一家「Lの一族」の長男であり、引きこもりの凄腕ハッカー・三雲渉役。てんとう虫型メカを操り、引きこもり部屋から拡声器越しにしか会話しないという極端なキャラクターを、彼は完璧な説得力で演じ切った。
続編や『劇場版 ルパンの娘』に至るまで、彼の放つ独特の間合いはシリーズ屈指のスパイスとなった。決して大仰に騒ぎ立てるのではなく、微動だにしない表情筋と目の動きだけで笑いを生み出す。この作品で見せた高度なコメディセンスによって、彼は単なるモデル出身の枠を完全に破壊し、日本屈指の「怪優」としてのポジションを確立したのだ。
Netflix世界配信作で見せるバイリンガル俳優としての凄み
栗原の進化は国内だけに留まらない。幼少期をイギリスで過ごしたバックボーンを持つ彼は、ネイティブレベルの英語力を誇る。その強みが近年、Netflixをはじめとするグローバル配信プラットフォームの作品で一気に花開いた。
海外製作陣が彼を重用する理由は明白だ。言葉の壁がないことはもちろん、西洋と東洋のニュアンスが絶妙に溶け合った独特のビジュアル、そして何よりフィジカルシアターで鍛え抜かれた無国籍な存在感がある。劇中で数分間登場するだけでも、観る者の脳裏に強烈な爪痕を残す。グローバルなキャスティングディレクターたちが、日本の特異な才能として彼の名前をリストの上位に書き留める理由がそこにある。
『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』が示した生き方の哲学
栗原類を語る上で欠かせないもう一つの重要な転機が、自著『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』の出版だった。幼少期にADD(注意欠陥障害)の診断を受けたことを公表し、自身の生きづらさや、それとどう折り合いをつけてきたかを赤裸々に綴った一冊だ。
決まった手順や台本が存在する「演技」の世界こそが、彼にとって最も呼吸しやすい居場所だったという告白は、多くの当事者や表現者に深い勇気を与えた。現在の私生活においても、彼は自身の特性を深く理解し、規則正しいルーティンを徹底しながら日々の表現に向き合っているという。弱点とされたものを独自の武器へと転換したこの経験こそが、彼が演じるキャラクターたちに宿る、あの底知れない人間味の源泉なのだろう。
唯一無二の表現者として築く新境地の先へ
ファッションモデルとしての洗練、テレビタレントとしての瞬発力、そして泥臭い演劇の現場で磨き上げた表現の刃。それらすべてを血肉に変え、俳優・栗原類は今、かつてないほど自由に羽ばたいている。
かつての「ネガティブ」という記号は、物事を深く観察し、人間の影をリアルに捉えるための繊細な感性だったのだと気づかされる。流行に流されず、自身の足元を掘り下げ続けた男の現在は、実に凛々しく、力強い。表現者としてさらなる高みへと登り続ける彼の視線の先には、まだ誰も見たことのない新しい景色が広がっている。 (出典: 栗原 類 現在(Yahoo!ニュース))